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今月の法話 2022/02/28

宗務所

3月の法話 ~「出逢い」を尊ぶ~

~「出逢い」を尊ぶ~

暑さ寒さも彼岸まで、と言いますように段々と冬の寒さも和らぎ春が近づいて来る頃となりました。今年の春分の日(お彼岸中日)は、3月21日、そして前後3日間の計7日間がお彼岸と呼ばれます。
お彼岸期間は皆様それぞれに菩提寺やお墓に参り、ご先祖様へ感謝の想いを捧げることと思います。
また3月と言えば、年度末。学校では卒業式、勤め先では退職や人事異動という別れの時期でもあろうかと思います。そして、4月には新しい環境へ飛び込み、新たな出逢いのある方もいらっしゃることと思います。
春へ向かうこの時期は別れと出逢いの時期でもあるのではないでしょうか。

ある邦楽アーティストの曲に次のような歌詞が綴られています。

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(前略)
例えば「出逢い」なんて無く 例えば「貴方」なんて居なく、
そしたら そう間違いなく 独りは寂しく悲しいから息を止めるんだろう。
(中略)
貴方は優しさで傷を負う日もあるけど笑って
でも貴方の微笑みだけじゃ 救われない世界が心底嫌いになりそうだ
貴方はその傷を 癒してくれる人といつか出会って
貴方の優しさで 救われるような世界で在ってほしいな
誰かは出会って誰かは好いて 誰かは嫌って 人は人は
傷を癒して 心撫で合って 人は、人は
笑顔であってほしいな
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

上記の歌詞を考察していくと、

もし、この世の中が「出逢い」のない世界であったり、また、今支えてくれている「貴方」のいない世界であったならば生きていくのは難しいだろう。
私たちは人生の中で様々な人と出逢い、ときに人の優しさに触れる。また反対に、相手に寄り添い接していても心傷することがあります。
このように、私たちは不条理な世の中を生きています。
「出逢い」によって自身の心が傷つき、また相手を傷つけてしまうこともあるかもしれない。しかし、その心の傷を癒してくれるのも、同様に人との「出逢い」である。
一人ひとりが「出逢い」を尊ぶことで、優しさが優しさで還元されるような、心穏やかに過ごせる世の中になっていく。
どうか「出逢い」によって皆が笑顔で過ごせる世の中になってほしい。

とこのように、歌詞からは「出逢い」の尊さを訴えているのが伝わってきます。

禅語に「我逢人」(がほうじん)とあります。「我、人と逢うなり」、これは人と人との「出逢い」の尊さを表す三文字の言葉であります。曹洞宗の開祖道元禅師はお若い頃に師匠を求め、困難を乗り越えながらも中国に渡りました。そして、ようやく念願の師匠と出逢うことができ、その際の喜びを「まのあたり先師(師匠の意)をみる これ人に逢うなり」という言葉に残されました。

考えてみますと、今を生きる私たちは「出逢い」の中を生きていると言っても過言ではありません。家族、親戚、友人、恋人、職場の同僚・上司・部下、沢山の人々との「出逢い」によって今の自分が支えられているのがわかります。

しかしながら昨今、親子や友人、恋人間で傷つけたり、命を奪ったりと、痛ましい事件がテレビやネットニュースで流れているのを目にします。
今自分が生かされているのは、これまでの沢山の「出逢い」があってこそということに気付いていただきたいのであります。
皆が皆「出逢い」を尊ぶことで、心穏やかに過ごせる世の中に向かっていきます。
また、「出逢い」によって自分にはない新しい価値観を学ぶこともでき、それによって新たな自分にも出逢えるきっかけになります。
どうか、今までの「出逢い」を大切に、そしてまた、これから訪れる新たな「出逢い」も大切に、日々を過ごしていただきたいのであります。

引用: Mrs. GREEN APPLE 「我逢人」  https://www.youtube.com/watch?v=OqEVEShYOv8