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今月の法話 2022/09/01

宗務所

9月の法話 中道(ちゅうどう)の生き方 ―「誰一人として取り残さない社会の実現」に向けて―

中道(ちゅうどう)の生き方
―「誰一人として取り残さない社会の実現」に向けて―

よくテレビ番組の最後に「詳しくはホームページをご覧ください」といったメッセージが流れます。ひょっとしたら、何気に目にしているかもしれませんが、「ホームページが見られる環境にない方や使い方がわからない方はどうすればいいのか」と問われたとき、何か代案はあるのでしょうか。私自身、この問いに対して、ハッとさせられたものです。

近年、メディア等でもしばしば見聞きするようになってきた言葉に「SDGs(持続可能な開発目標)」があります。SDGsは2015年に国連サミットで193の加盟国によって、全会一致で採択された17の課題を全世界で解決していこうという国際目標です。表題の「誰一人として取り残さない社会の実現」は、このSDGsのキーワードとも言うべきものです。また、仏教が目指す「皆が救われることを願う」という方向性とも合致しており、2018年の「WFB世界仏教徒会議」では仏教界が一丸となってSDGsの実現を支援していくことを表明、翌2019年には曹洞宗でもSDGsの推進が表明され、布教教化方針に盛り込まれていくようになりました。

―「誰一人として取り残されない社会の実現に向けて」―
これは先のホームページの事例で言えば、誰もがホームページに掲載されていることに触れられてこそ、実現できることと考えます。そのためにも、何か一つの方法だけに固執し、それだけを認めるような方法を採れば、必ずや取り残される方が出てくることを知っておきたいところです。恩恵を享受できる人が普段から様々な方法を認めたり、色々な考え方があることを受け止めたりしながら、偏らないよう、分け隔てなく関わっていく姿勢を持つことが大切かと考えます。

仏教は「中道(ちゅうどう)」の教えといわれます。これは何事に対しても、一点に偏らずに関わっていく生き方です。一つのことだけを認めるようなモノの見方や考え方、自分がやりたいことだけを集中的に行うといった偏った言動を採るのではなく、色々な考え方や方策を認めていくことによって、皆が救われていくのです。

私のお寺にもホームページはありますが、パソコン等を用いた真新しい伝達手段ばかりに頼らずに、昔から親しまれてきた電話や手紙などの方法も用いながら、相手に応じた形で、「誰一人として取り残すことなく情報が伝達できるようなお寺でありたいと思っています。そのためにも、我々一人一人が偏らない「中道の生き方」を心がけていきたいものです。