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今月の法話 2022/10/01

宗務所

10月の法話 「一転語(いってんご)-悟りへのことば-」

「一転語(いってんご)-悟りへのことば-」
秋も深まってきました。十月は十三夜(じゅうさんや)といい仲秋の名月「十五夜」に次いで美しい月と言われ、今年は十月八日(土)になるそうです。ぼんやりと月を眺めていると「ああ、きれいだなあ」と心打たれて、ふと日常を忘れることができます。
 以前、忙しくて人付き合いに疲れてしまった時に、いろいろな人に「こんなときどうしましたか?」と聞いて回ったことがありました。
 叔母には「どんなにいそがしくても一部屋だけでいい、掃除して綺麗な部屋を作りなさい。」と教えていただきました。
また長くお寺の総代をつとめたK様には「これまでの経験でリーダーをするにあたって大事なことはなんですか?」と聞いたときには「計画は綿密に行動は大胆に。」と教えて下さり、「では夫婦として大事なことってなんでしょうか?」と伺ったとところ「尊敬を忘れないことです。」とにこりと笑って答えられました。いまではもうお亡くなりになられていますが、戦中に予科練を経験された方でした。
バスの運転手さんをしている知人に聞いた時は「職業分野が違うとは思いますが、会社で生き抜くってどういうことが必要でしたか?」と。
その方は「自分の味方を三人つくる。そうすれば敵だらけになってもかならず生き残れる。」と答えて下さりました。

その時は人生を生き抜く智慧をすこしでも分けてもらえればという気持ちでした。いまだにどの言葉もしっかりと自分のものに出来たことはないですが、その時折に心の指標となって励まされました。迷ったときに道を指し示してくれる言葉こそ禅の世界では『一転語』といい、悟りへと導く尊い言葉とされています。おかげさまで今日も無事でいられる。満月でない不完全な形でもありのままに照らしてくれる姿こそ美しいと感じます。
十三夜に曇りなしといいます。どうぞよろしければみなさまも少しの間、夜空を見上げてみてはいかがでしょうか。